コラム

女社長漂流記

やっちまったよ。金融公庫の融資計画、惨敗。【女社長漂流記 vol.07】

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ただのデザイナーだったコヤナギユウが新会社法を使って社長になり、新事業を立ち上げた。 成功者ともキャリアウーマンともほど遠く、社会の荒波を漂流し続ける女社長・実録コラム。

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2009年、32才のわたくし

思い切って叫んでみる?
もうムリです! 出来ませんって。
それで全てが止まるには遅すぎた。
「面白さ」に足元をすくわれた女社長コヤナギユウを乗せた小舟は、荒れ狂う大海原にすでに出ているのだ。



すでに支払った物件の内金はもう戻ってこない。
ならばいま諦めるのも、仮押さえ日時ギリギリまで足掻くのも同じ。
一度「GO」と決めたなら、気持ちで負けちゃならねぇ。
そう、オンナは度胸なのだ。

お店作る本をつくる……ためにお店を作る! だって面白いでしょ? そんな馬鹿げた計画に本気で取り組んだ2009年の夏。私はひとつ年をとった。マネージャーという肩書きを預かって、お邪魔していたスタジオでアーティストに祝われる、なんて最高の誕生日だった。


やっちまったーーーーーーーーーーーーー!!!


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レコーディングスタジオで大好きなミュージシャンに誕生日を祝われた

山あれば谷有り。
最高の誕生日を過ごし32才となった翌日、私の元に、一通の封書が届いた。
うす緑の封筒で、厚さも、薄い。差出人には「日本政策金融公庫」とあった。

初めての事業計画書を作成し、完全なキャパオーバーを自覚しつつ、事業融資を得るべく日本政策金融公庫の門を叩いた。
あれからまだ5日。
……早い、早すぎる。

面談の後2週間前後の審査があるんじゃなかったのか。
融資が通れば手はずがあるはず。
この早すぎる返事は、そう、開封するより明白なNOの答えだった。

……。

…………。

や……やっちまったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

こんなとき、度胸なんてなんの役にも立たない。
つか、結果を告げられるだけの状況に度胸なんか関係ない。
崩れ落ちそうな絶望感の中、薄れ浮く意識。
ハッ! いかん、いかんいかん! 真っ白に飛んだって1円にもなりゃしない。

実はもうひとつ手は打ってあったのだ。
というか先輩の助言に従った。


ダメだったら諦める程度じゃ、甘い


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ミーティングで内容は詰まっていく

私の「先輩」というのは今まで働いてきた会社の上司にあたる人達だ。
年齢は比較的若く、友達のような人もいるので実際に「先輩」なんて呼んだことはないけれど、第三者に説明する時は、「元上司」というより「先輩」という言葉の方がしっくりとくる。

今まで16回ほどの転職を繰り返して来た。職場選びの基準は、何を差し置いても「やりたいかどうか」だった。次に「面白いかどうか」「勉強になるか」になっている。そういうところは得てして一般的に待遇が良くない。労働時間はずっと合宿ってほどエンドレスに長いし、残業代の概念などもちろんなく、専門書を買っても経費にならない。
それでも、構わなかった。仕事か、人か、またはその両方が面白かったから。(体力が続かないので離職率はどこもヤバいんだけど)
だから、私の先輩や同僚は、過酷な状況をバネにベンチャー精神がたくましく、そのほとんどが数年後には独立起業していた。
社長としても、先輩なのだ。

先輩方から教えられたことがあった。

「融資は一カ所に頼ってはいけない」

ダメだったら諦める程度の事業計画では甘い。ゼッタイに通すためにはそれ相当の準備をするのが大切だと。なるほど、それこそ「度胸」ですな。

法人2年目の会社が、今までの事業(広告・書籍制作)から小売店鋪開店なんて無謀感満載なのは分っている。
だけど、会社としての歴史は浅くても、事業としては3年目を向かえている。新規事業ではなく、運営資金として申請すれば融資をしない理由がないはず。

信用組合の組合員に申し込み、審査の結果を待っていた。

大丈夫、きっとこっちは大丈夫。
そう自分に言い聞かせながら、金融公庫との戦いに幕を閉じた。


オンナは度胸! のデジャブ?


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行きつけのジョイフル本田

仮に融資が降りたとして(というか降りていただかないと即・崩壊☆なんだけど)潤沢に資金が手に入るわけじゃない。
そのほとんどが物件の保証金に飛び、店舗オープンに合わせたオリジナルアイテムの制作費やら仕入れ代やらは完全に足が出ている。足と言うより身体まるまる入ってないと言った方が正しい。

金がないなら労力を惜しむわけにいかない。
内装はもちろんDIYで手作りだ。
店舗は著者の店になるので、イメージやデザインは彼のものだ。
オークルナットで統一された板張りの内装イメージ図。

木は木材になっても呼吸しているそうだ。
買ってそのまま使ってしまうと、そのうち乾燥した木が縮んですき間だらけになる。
だから木材は購入後、梱包を解きバラバラにしてしっかり乾かさねばならない。
そう、ざっと2週間ほど。

というわけで、2tトラックに揺られ、千葉のジョイフル本田までやって来ちゃった。
もちろん、木材を買うために。

融資は降りていないので、木材の買出しには私のクレジットカードを切る。
そ、そうさ。
お店が開くスケジュールで行動しないと、全てが間に合わない。
今こそオンナの度胸の見せ時だ。
“気持ちで負けちゃならねぇ”だ!

……あれ? このパターン、デジャブ?
航海難航中でーっす!

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杉板を300本くらい買ったが300本くらい足らなかった



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コヤナギユウ


イラストレーター・デザイナー・プランナー・エディター。(株)yours-store代表取締役。77年新潟生まれ。路上でイラストポストカードを販売、 口コミで話題になり21歳で画集「and you.」(サンクチュアリ出版)を出版。渡米以後雑誌連載、グッツ展開を経てデザイナーに転身。2007年より法人化。2010年、下北沢にリアル店舗 「yours-store」を構え、同年に12年ぶりの著書を出版。
BLOG:i live you
TWITTER:KoyanagiYu
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