コラム

女社長漂流記

頼みやすくて、頼りない、依存症の女社長?【女社長漂流記 vol.06】

このエントリーをはてなブックマークに追加

ただのデザイナーだったコヤナギユウが新会社法を使って社長になり、新事業を立ち上げた。 成功者ともキャリアウーマンともほど遠く、社会の荒波を漂流し続ける女社長・実録コラム。

06_01
2009年の夏も暑かったニャ……。防災センターにて

「代表取締役個人の印鑑証明まで提出なんて、初めて聞いたよ~」
物件の仲介業者となったおじさまTさんが言う。
不動産屋さんをそそくさと立ち去ると、ホッと一息ついたようだ。


「ま、これでとりあえず物件の仮押さえはすんだし、払うもの払えばオッケィでしょう。いや~、コヤナギさん若いから、頼りなく見えるんでしょうね」

相変わらず融資の目処が立たぬまま、時間だけは順調に進み、ひとまず物件の仮押さえをした。広告制作の仕事で得たお金を丸投げ。内金として30万円を不動産屋さんに置いて来たところだ。

「じゃ、8月20日までに残りの150万円用意して来て下さいね~。じゃないと物件も、内金もながれちゃうんで~。じゃ、頑張ってね~」

そう言い残して淡いピンクのポロシャツを着たTさんの後ろ姿が、下北沢の街へ消えていった。


頼りなさに覚え有り



フリーデザイナー上がりで2007年法人化。設立2年目の博打とばかりに書籍事業を立ち上げて、“お店を作るHow To本”をつくるために、店を作ろう、そのために融資をもらう! ……なんていう、とんでもない計画を進めていた。

というか、「融資が出たらお店でも作ろう♪」なんていうお気楽な話しじゃなくなって来てる。だってもう、内金払っちゃったもん。
スベれない……スベれない話ですよ。

私が“頼りなく見える”のは、やっぱりここだけじゃない。

書類一式を揃え、肩が外れそうなくらい重い大量の製作実績を持ち「日本政策金融公庫」渋谷店の門を叩く。

前回は「相談」に来たが、今回は申込も完了し、いよいよ面談なのだ。

何も悪いことしているわけじゃないし、むしろ私はお客さんだ。なにも緊張することはない。そう言い聞かせ、表面上は平静を装いながらも、心の中ではアメフトもビックリの怒り肩。だって、本のために店を作るなんて「新規事業」がいかに上手くいくか、喋って喋って、喋り倒さなくちゃっ!

今回、公庫に申し込んだ融資のコースは「新規開業資金」

始めたばかりの書籍の制作に、店舗の開店の費用だもの。
突拍子もない新事業のようでも、筋は、通ってる……ハズ。イケるでしょ。
っつーかスベれないっつーの!!!


コヤナギユウ VS 日本政策金融公庫



同年代(か、ちょっと年下)のお兄さんが現れた。
ワタヌキさんだ。彼がうちの担当になるらしい。

右奥にある職員のデスクと連結した相談窓口に通されて面談スタート。

(企業概略書を見ながら)「ではまず、決算書の原本を拝見できますか?」

「職種はどういった内容で?」

「単価はおいくらくらいですか?」

「この“制作費”ってなんですか?」

「売上比率はどのくらいですか?」


……あれ? 申し込み時に書かされた会社を簡単に説明する「企業概略書」の内容と、決算書の照らし合わせばっかりだ。
こんな感じのやりとりで1時間近く過ぎて行く。
融資の対象となるはずの「新規事業」の質問はいつ?

「書籍の著者はコヤナギさんですか?」

ーーいえ、別の者です。

「う~ん。」

(おや、難色)


依存度が高いと見るでしょう



06_02
社会の荒波の他に暴風暴雨にも堪えるワタクシ。防災センターにて

結局、創業に関することはほとんど聞かれず、
「そろそろ面談を終わりにします」ムードに。
慌てて取材ばりに質問をする。

コ「審査はワタヌキさんお一人でするんですか?」

「いえ、上司と相談して。毎週会議がありますので、そこで決定します」

コ「ぶっちゃけ、ワタヌキさんの感覚として弊社はどうですか?」

「そうですね。広告にせよ、書籍にせよ、
 代表者が技術を持っている(著者ではない)わけではないので
 “依存度が高い”と見るでしょう」
コ「(カチーンときつつ)なるほど。そういう見方もあるんですか」

「ホームページ等も拝見させていただきますね。それでは、また」

……と、こんな感じで面談は終了。
聞かれたことには答えた。
けど、けどさー……!


百抹くらい不安が残る



肝心の「新規事業」のことはほとんど聞かれなかった。
融資は新規事業に対して行うんじゃないの?

それに気になるあのひと言。
「依存度が高い」ってどういう意味?

デザインや編集は代表者の技術にはならないの?

一抹どころか百抹くらい不安が残る面談だったけど、とりあえず終えた……
あとは運をワタヌキに任すのみ、だ。

私ってそんなに“頼りなく見える”のか?

事務所に戻ってスケジュールを確認する。
店舗の内装はもちろん、自分たちでやるつもり。

木材を買うのも自分たちだから、内装日までに木材を二週間ほど乾かしたりなくちゃなんない。
そろそろ具体的なスケジュール立てなくちゃ……

「社長、どーすんの? 店出るの? 出ないの?」

明らかに他人事風情で追い立てる著者よ。
君の店でもあるのだよ、君の。

こちとら内金払っちまってるんだ。
損するわけにはいかないし、こういうときは、そう、
“気持ちで負けちゃならねぇ”だ。

コ「……出るよ」

「え? 出るの!? じゃあ、来週にはホームセンターいかないとな。社長、レンタカー予約頼んだ」

頼りないのに頼みやすいのか、私。
き、気持ちで負けるな……!


06_03
なんだろ、この、海図も持たずに大海原に出ちゃった感……


01

コヤナギユウ


イラストレーター・デザイナー・プランナー・エディター。(株)yours-store代表取締役。77年新潟生まれ。路上でイラストポストカードを販売、 口コミで話題になり21歳で画集「and you.」(サンクチュアリ出版)を出版。渡米以後雑誌連載、グッツ展開を経てデザイナーに転身。2007年より法人化。2010年、下北沢にリアル店舗 「yours-store」を構え、同年に12年ぶりの著書を出版。
BLOG:i live you
TWITTER:KoyanagiYu
COLUMN:女社長漂流記

ページトップ

人気ブログランキングへ ブログパーツ