コラム

東京ラテン女子生活

初心者のためのブラジル音楽の魅力 vol.4

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 また前回の記事から随分時間が経ってしまいましたが、皆さんご機嫌いかがでしょうか。Webデザイナー兼サルサダンサー見習いのcremaです。


 今日は今までの記事と少し趣向を変え、ラテン音楽の1ジャンルとも言える「ブラジル音楽」に目を向けてみましょう。平均的な日本人が想像するブラジル音楽って、浅草でイベントがあるような「サンバ」でしょうか? あとは、カフェでよくかかっているような「ボサノバ」?


 実は、もっともっと奥深いのが「ブラジル音楽」。その魅力を知りたくて、ブラジル音楽を愛するDJ haraguchicさんと道玄坂のブラジル酒場「Bar Blen blen blen」で待ち合わせ、ブラジル料理のフェイジョアーダ(黒豆と肉のシチュー)を食べながらインタビューしてきました。

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 haraguchicさんは、ヒップホップやハウスとともにブラジル音楽が大好きなDJ。14歳の頃、ORIGINAL LOVEの田島貴男さんに影響を受けブラジル音楽を聴き始めたそうです。その後、ブラジル音楽界では有名なDJ成田佳洋さんの薫陶を受けながら徐々に大きなイベントでDJをするようになり、「いい音楽を日常に」をモットーに、精力的に活動しています。

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ブラジル音楽の魅力は「Saudade(サウダージ)」

──ブラジル音楽って、どんなところが魅力なんですか?

haraguchic:ブラジル音楽は、ラテン音楽の中でもどこかソフィスティケートされているんですよね。ルーツはサンバだったりするんですけど、ジャズの影響もあったり、ポルトガルの植民地だったのでヨーロッパのクラシック音楽のハーモニーのある要素も取り入れていて。そしてそれらが、黒人音楽の要素と交錯しているんです。ラテン音楽は大体そういうルーツを持っているんですけど、ブラジル音楽って他のラテン音楽と違って、なぜか特別に陰鬱な雰囲気があるんです。


──確かにそれはありますよね。

haraguchic:特にボサノバなんて、ブラジルの音楽だって知らない人もいますからね。フランスの音楽だと間違えてたりするし(笑)。なんでかっていうと、どこか非常にデリケートなものがあって。ポルトガル語で「郷愁」とか「切なさ」という意味の「Saudade(サウダージ)」っていう単語に象徴されていると思うんですけど、ポルトガル語圏の人が持っているアンニュイな感じを常に漂わせていると思うんです。

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──そこがなんとなく、スペイン語圏と違うんですよね。

haraguchic:中南米でひとつだけポルトガル語の国で、マイノリティですからね。寂しさがあるというか。僕は最初に、ブラジル音楽の中でもサンバのように突き抜けたダンスミュージックではなく、白人が作っているようなセンシティブな音に惹かれたんです。ずっとそういう音楽しか聴いてなかったんですけど、DJをするようになってから、「ダンスミュージック」を意識するようになって、プリミティブなサンバとかを聴くようになりました。


「サンバ」だけじゃないブラジル音楽

──なるほど。でもブラジル音楽って、サンバだけではないですよね。

haraguchic:そうそう。日本の音楽が演歌だけではないように、ブラジル音楽にもサンバやボサノバだけじゃなく、普通にジャズやヒップホップや現代音楽があるし。DJとしては、そういうステレオタイプじゃない「面白い音」を日本に紹介したいところです。


──ところで、ブラジル音楽って、日本では受け入れられているんですかね?

haraguchic:いや、ブラジル音楽って、実は日本ではすごく受け入れられているカルチャーだと思う。でも、僕はブラジル音楽がもっとメインストリームにあるのかと思ってたけれど、実はサルサとかのほうが愛好者の人口が多いんですよね(笑)。日本人は、サルサみたいにフォーマットに沿ったダンスが好きなのかもしれない。ブラジルにもガフィエラというダンスがあったりするんですけど、あまりみんながクラブでフォーマットに沿った踊るという感じではない気がするんです。


──サルサダンサーとしては、なんだかすごく納得してしまいます(笑)。


初心者におススメのアルバム「旧譜編」

──ところでそろそろ、初心者の方におススメしたいブラジル音楽のミュージシャンを教えていただけますか?

haraguchic:それを話す前にひとつだけ書いてほしいことがあるんですけど、やっぱりブラジル音楽は、サンバやボサノバだけじゃないということ。サンバ・カンソンやショーロといった音楽のルーツもあるし、ブラジルのレゲエシンガーとかも普通にいる。そういう豊穣な音楽文化のある国だということを知ってほしいんですよね。ということで、まずは旧譜から見ていってみましょうか。


ジョアン・ジルベルト

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 まずは、「ボサノバ」の生みの親であるジョアン・ジルベルトのアルバム。バチーダというギター奏法を駆使し、若いミュージシャンに対して絶大な影響を及ぼし、「ボサノバ」というムーブメントを作り出しました。このアルバムのタイトルは、彼自身の名前「ジョアン・ジルベルト」。メキシコに住んでいた時代の内省的な音は、「Saudade(サウダージ)」を存分に感じさせます。

 「ブラックミュージックが好きな人にも、きっと気に入ってもらえる音だと思いますよ」(haraguchic)


カエターノ・ヴェローゾ

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 次は、ジョアン・ジルベルトに多大な影響を受け後継者とも称されるミュージシャン、カエターノ・ヴェローゾのセルフタイトルアルバム「カエターノ・ヴェローゾ
」。アンニュイでメロウなギターの音と声は、BGMで聴くのではなくじっくり向かい合って聴いてみたいものです。


ベベート

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 ルイス・エサ、エルシオ・ミリトというミュージシャンと組んでいた「タンバ・トリオ」のボーカリスト/フルート奏者として活躍したベベートのソロ・アルバム「ベベート」。柔らかく低く温かいフルートの音は、聴く人の心をとらえます。


いわゆる「ボサノバ」は、実はカフェで聴く音楽ではない?

haraguchic:ここまで挙げた3人は、日本人が思ういわゆる「ボサノバ」という音楽ジャンルに当てはまるかもしれないけれど、実は彼ら自身は「僕はボサノバのアーティストだ」とは一言も言わないんですよね。「ボサノバ」というのは、あくまで外から与えられた名前というか。

──なるほど、そうだったんですね。


haraguchic:あとね、割と多くの人が「ボサノバ」のことを「カフェでかかるおしゃれな音楽」ってとらえている気がして。でも、いま挙げたようなミュージシャンは「カフェのおしゃれなBGM」を作りたかったんじゃなくて、ノイジーじゃない音数の少ない純粋な音楽世界を作ろうとしているんですよ。鬼気迫る真剣勝負な部分もある。だから本当は、カフェで聴くような音楽じゃないかもしれないですよ(笑)。

──そうかもしれませんね。


haraguchic:それにしてもブラジルの音楽って、泣きながら笑っているというか、どうにもならない運命を受け入れるというか、そういう切ない雰囲気を持っているんです。「今日一日を生き抜くためにこの恋愛をして、明日はどうなるか分からない」というような、刹那的な雰囲気。そこが魅力ですね。


初心者におススメのアルバム「新譜編」

オルケストラ・インペリアル

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 新しいアルバムでおススメなのは、ブラジルの超一流ミュージシャンが何か楽しいことできないかなという軽いノリで集まって作ったバンド「オルケストラ・インペリアル」。メンバー全員が集まってライブをする機会も希少な、現代ブラジル音楽の「ミクスチャー・カルチャー」を象徴する一枚です。


セウ・ジョルジ

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 次は、わたくしcremaも大好きなブラジルの色男セウ・ジョルジのファーストアルバム「サンバ・エスポルチ・フィーノ 」。haraguchicさん曰く「このアルバムは全然ブラジルっていう感じじゃない」ということで、現在進行形のサンビスタ(サンバ奏者)である彼の「ミクスチャー感覚」を堪能できます。


ヘナート・モタ&パトリシア・ロバート

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 最後のアルバムは、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバートというカップルのミュージシャンの「ドイス・エン・ペソア 」。彼らが日本ツアーをした時にサポートDJをしたharaguchicさんにとっては、思い入れのある彼らの音楽は、ポルトガルを代表する詩人フェルナンド・ペソアの詩をモチーフにするなど、完璧なインテリジェンスに支えられています。東洋的な深さすら感じさせる彼らのライブを私も拝見しましたが、心の静けさに沁み入るような美しいハーモニーでした。


 こんな感じで駆け足にブラジル音楽のことに触れてみましたが、いかがでしょうか?


 ブラジル音楽に入るきっかけは何でもいい。スポーツ、食文化、アパレル、色々な「ブラジル」から一歩踏み込んで、あなたが「ちょっと聴いてみようかな」と思ってくだされば、私はとても嬉しいです。


 それでは最後にふたつ、東京でブラジル音楽に触れられる関連情報をお知らせしておきますね。


Bar Blen blen blen

 ひとつめは、今回取材にご協力いただいたお店、東京都渋谷区道玄坂の「Bar Blen blen blen」。マスターの宿口豪さんは日本のブラジル音楽界で名を馳せているDJさんでありながら、気さくな接客と美味しい料理で和ませてくれる、素敵なお店なんですよ。ふらっとカウンターに座ってブラジル伝統のカクテル「カイピリーニャ」を注文すれば、ちょっとした旅気分が味わえるかも。

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Adress:渋谷区道玄坂1-17-12 野々ビル2F
Tel:03-3461-6533
URL:http://blenblenblen.jp/
Open:Tue-Sat pm8:00-pm4:00, Sun イベントによって異なります。
Closed:Mon, Holiday


comigo vol.2 - so musica brasileira-

ふたつめは、haraguchicさんが今月(2010年11月)開催する、ブラジル音楽のイベントです。タイトルは「comigo vol.2 - so musica brasileira-」。「comigo = 一緒に」という意味が込められています。

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Date: 2010.11.21.sun 16:00-23:30
Location: 青山蜂 (http://www.aoyama-hachi.net/)
Charge: DOOR: 2,500yen(w/1drink) / with Flyer: 2,000yen (w/1drink)
★受付にて「東京ナイロンガールズを見ました」と言うと、500円OFFのディスカウントゲストで入場できます!ぜひ!★


 今回お話ししてくれたharaguchicさん、Bar Blen blen blenのマスターでもある宿口豪さんも出演しますし、J-WAVEの人気番組「サウージ!サウダージ」の選曲で有名な中原仁さん、NHKのスペイン語講座にも出演していたイケメンDJのKTa☆brasilさんなどなど、豪華DJ陣が目白押しのこのイベント。心の底からおススメします。ぜひ!

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