ガール・ミーツ・ガール

背筋が伸びてる普段着の街「三軒茶屋」 with コヤナギユウ

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三軒茶屋×コヤナギユウ
ゲストの女の子にとっての「飾らない場所」でデートするフォトセッションインタビュー。
3回目のゲストは、株式会社yours-storeの社長として、本の出版や広告制作、アーティストのマネージメントなどを行うアグレッシブガール、コヤナギユウさんに、8年住んでいるという三軒茶屋を案内してもらいました。

Photo & Text:トミモトリエ



三軒茶屋×コヤナギユウ
玉川通り、首都高速3号線、世田谷通りが交差する三軒茶屋交差点。東急田園都市線の三軒茶屋駅入り口前。

給食のおばさんとして住み込みで北千住に

──コヤナギさんは何者なんですか?

肩書きだけ並べると、イラストレーター、デザイナー、コピーライター、プランナー、ディレクターで、株式会社yours-storeという会社の社長です。 会社は何をやっているのかというと、本の出版と、広告制作と、アパレルブランドやフリーペーパー作ったり、お店の経営サポートやアーティストのマネージメントみたいなのもやってます。

──すんごいたくさんやってますよね。

わたし、普通のイラストレーターやデザイナーと違って、変な道を通ってここに来てるんです。 なんでここに来れたのかというと、たくさんの人にサポートしてもらって、引っ張ってもらったからなので、わたしも同じことしなきゃと思って。 それで、何かを「やりたい」って人にできる限りのチャンスを与えていく、という実験をたくさんしていたら今の状態になってしまったという(笑)

三軒茶屋×コヤナギユウ
三軒茶屋×コヤナギユウ
コヤナギユウさんが出版記念パーティーをやったという、雑居ビル最上階にあるカフェ「a-bridge(エーブリッジ)」。

──どういう流れでそこに辿り着いたんですか?

すんごい話長くなりますけどいいですか?(笑)
まず、高校を卒業して、学校に行きたくなかったかったんです。 お金払って勉強するのがいやで、やりたいことも決まってなくて、でも東京に行きたくて、どうしよう・・・みたいな。 その頃、料理ができなかったので、調理の仕事を住み込みですれば料理ができるようになるんじゃないかと思って、給食のおばさんとして住み込みで北千住に来たんですよ。

──給食のおばさんですか!?

学校の給食じゃなくて、銀行の社員寮でご飯を作るっていう仕事ですけど。三角巾かぶって(笑) 元々2年間でやめるつもりで入った会社なので、お金をためながら、1年くらい何をしたいのかずっと考えてました。

三軒茶屋×コヤナギユウ
三軒茶屋×コヤナギユウ
ランチ営業は11月からはじまったばかり。ハッシュ・ド・ポークライス、1,000円(税込)。

自分の名前を使ってできる何かをしなきゃと

──それで、やりたいことはみつかったんですか?

元々、美術は得意で好きだったから、イラストレーターとかデザイナーになりたいという気持ちはあったんですが、美大や専門学校に行かないとできない仕事だと思っていたので、あきらめてたんです。 それよりも、服装や髪型が自由で、好きな格好して生きていける仕事をしたいと思って、なんとなく「雑誌社いいかも」と・・・

──なかなか厳しい業界選びましたね(笑)

さすがに編集の仕事は、大学も出ていない給食のおばさんからの転身は無理だろうと思って。でも、ライターならいけるんじゃね?と思って、 貯めたお金でライター教室に通ったんです。まだ何もしてないのにライターって名刺つくって配ったりして。それで、書籍の出版社に転職しました。 それが、当時高橋歩さんの立ち上げたサンクチュアリ出版だったんです。

──なるほど。でも、出版の仕事はけっこう大変だったんじゃないですか?

そうですね。もう、暮らすように働いて・・・(笑)で、だんだん独立心が芽生えて来て「こんなしたっぱのバイトみたいなことしてるだけでいいんだろうか?」って考え出して、 「自分の名前使ってできる何かをしなきゃ」と思たんですよ。で、路上でポスカードを売りはじめたんです。

三軒茶屋×コヤナギユウ
三軒茶屋×コヤナギユウ
レトロな店が立ち並ぶ、エコー仲見世商店街。最近は新しい店も増えているよようです。

本を出して、その印税でニューヨークに

──路上で売っていたというのは、自分のイラストのポストカードですか?

そうです。仕事が終わった後、夜22時から終電までの間、渋谷の井の頭線に乗り換えるシャッター閉まったころで、自分のイラストのポストカードを売ってたんです。 それが、ポストカード1枚150円なのに、一晩で1~2万くらい稼げるんですよ。これはいけると思って(笑) しかも、その時間ってちょうど終電間際なので、出版社の人がよく通るんです。雑誌の仕事とかもらえて、イラストレーターでやってけるんじゃないかと・・・。 それが20歳くらいの時なんですけど。

三軒茶屋×コヤナギユウ
深夜1:30まで営業している、アメリカ系雑貨屋「FARMERS」。家具や雑貨をよく買い物に来るそうです。

──そこからイラストレーターに転身ですか?

その頃、サンクチュアリ出版がちょうど体制変更の時で、高橋歩さんが辞めて、メインメンバーが自分含め社長と編集の人3人という状況だったんです。 あと2人口説けば本出せる!と思って、企画書出しまくって、本出して、その印税でニューヨークに行ったんです。なぜか・・・

and you
コヤナギさん著書のイラスト&詞の本「and you」(サンクチュアリ出版)

──え・・・なんでニューヨークに行ったんですか?

なんか、電車に乗ってて、まわりを見渡したら、みんな髪の毛黒くて、日本人ばっかなんですよ。 あ、わたしここしか知らない!世の中のこと知らない!どうしよう・・・
そうだ、ニューヨーク行こうって(笑)

三軒茶屋×コヤナギユウ
三軒茶屋×コヤナギユウ
螺旋階段をぐるぐる登って行く、バッティングセンター。肉のハナマサの横に、よーく見ると入り口があります。

──ニューヨークでは何をしていたんですか?

観光ビザで、黒人とシェアしながら、日本でやっていたのと同じように路上でポストカード売ってました。同棲した彼氏もいたのに、日本に置いていって。 せっかくニューヨークに来たんだから伝説をつくろうと思って、英語全くしゃべれないのに、友だちに英訳を書いてもらって、ニューヨークの本屋さんに営業に行って、自分の本を置いてもらったりもしました。 で、3ヶ月して日本に帰ってきたら「ユウのために会社つくった人がいるよ。」って言われて・・・

三軒茶屋×コヤナギユウ
三軒茶屋×コヤナギユウ
ビルとマンションに挟まれ、人ん家のベランダを狙うかのように打つ。スカッとしたい時によく来るらしい。

──え?どいういうことですか?

実は、ニューヨークに行く前に、友達のバーで個展をしてて、絵をほったらかしたままだったんですよ。 そしたら、まったく面識ないおじさんが、わたしのイラストを気に入って、わたしのマネージメントをするマネージメント会社つくってくれたって言うんですよ。 しかも「and you」っていう著書と同じ名前の会社を・・・

──ええええ!!それはすごい。

イラストレーターとして本気でやっていこうという自分の気持ちが固まる前に、まわりが動き出してしまって、じゃあやるかみたいな(笑) どこかで他人事のように構えてしまって。そんなんじゃやっぱり、うまくいかなかったんです。 雑誌の取材を受けたり、テレビに出たり、プロモーション的な依頼はたくさん来たんですが、 実際仕事に結びつかなくて・・・そういうストレスがたまって、最後、その社長と大喧嘩しちゃったんです・・・

三軒茶屋×コヤナギユウ
三軒茶屋×コヤナギユウ
昭和27年から昔のままの姿で残っている「三軒茶屋中央劇場」。ミニシアター系作品を2本立てで上映している。

仕事も友達も恋人も全部失って、八方塞がり

──その会社はその喧嘩で終わってしまったんですか?

ちょうど、24歳の誕生日のときにその社長と大喧嘩して・・・しかもその少し前に、当時の大親友とも喧嘩というか・・・誤解されて連絡くれなくなってしまった時で、 更に家に帰ったら、当時の彼氏とも別れ話になり・・・仕事も友達も恋人も全部失って、八方塞がりもいいところだよ!と(笑)

──うわあ・・・もう、全部リセットみたいな。

その頃は、1秒でも長生きしてる人を尊敬してましたね。死なないってすげーなーと。で、自分はいろいろやってきたけど、社会人としてはどうなんだ?世の中の役に立つんだろうか? とか考え出して、そこから突然、派遣の仕事をはじめるんです。 コンサバっていうの?普通の格好で、メガネかけて(笑)

三軒茶屋×コヤナギユウ
三軒茶屋×コヤナギユウ
花屋の前でコヤナギさんの友達とバッタリ。ポインセチアを買いに来たそうです。

──これまた極端ですね。

でも、派遣で1社目に入った会社で、突然新規プロジェクトの立ち上げをまかされて・・・ 派遣なのに、コンセプトからデザインからロゴとか全部やらされることになったんですよ。 2社目に入ったところは、広告の制作会社で、ウェブの案件がほとんどだったんですけど「派遣の時給じゃ割に合わないから家持って帰って外注の料金でいいよ」って言われたり、 次に派遣された会社は超大手の会社で、そこでも大きなプロジェクトを任されて成功して、金一封とかもらっちゃって、社員にならないかとか言われたんですけど、 大企業に入るということに魅力を感じなくて・・・

──普通に考えたらもったいない話ですけど、ちょっとわかります。

あとは、やっぱり紙の方がやりたかったんですよ。派遣で仕事に自信もついてきたし、グラフィックデザイナーとして社員になりたいと思って。 これが最後の転職だと思って、転職活動したんです。でも、見事に落ちまくって、やっと小さな代理店兼制作会社に就職するんですけど・・・そこがとんでもないブラック企業で、 精根尽き果てるまで仕事して、再起不能になりました(笑)

三軒茶屋×コヤナギユウ
もうすぐオープン(11月20日)するヴィレッジヴァンガードを覗き込む。

300万あげるから何かやらない?って言われて

──病的に、仕事できなくなる状態までいっちゃった感じですか?

その会社は半年もたなくて、最後は診断書提出して「辞めます」って・・・
本当に力尽きて、カッコイイもの見ても全くときめかないし、もう何もしたくないって状況になってウダウダしていたら 友達が見かねて「簡単なコーディングの仕事とかあるけどどう?」って言ってくれて、ちょっとずつ仕事していったら元気になって、 それからフリーランスで1年くらいやってましたね。そしたら、突然友達に「300万あげるから何かやらない?」って言われて・・・

──えええええ!?なんと・・・

わたしがいろいろやってるのも見ていて、彼女は自分でわたしがやっているようなことは出来ないけれど、300万融資するから何かやってみないかっていう話になって。「じゃあ、会社やる!」って、今の会社を立ち上げたんですよ。

三軒茶屋×コヤナギユウ
三軒茶屋×コヤナギユウ
森ガール系の洋服や雑貨が揃うセレクトショップ「Holiday A・PART・MENT(ホリデーアパートメント)」。

──映画みたいな展開ですね。なるほど、それでコヤナギさんもいろんな人をサポートする仕事をしたいって思ったわけですね。

「complex gala. (コンプレックス・ガラ)」というフリーペーパーも、編集をやってみたいっていう子がいて、わたしもフリーペーパーをやってみたかったので、1年間自社広告でやってみたり、オオヤギみきっていう友達の本の出版を手伝ったり、下北沢にショップを出したり・・・で、今に至ると(笑)

実際30歳過ぎてみたら全く変わらない

──コンプレックス・ガラは、同じ名前のファッションブランドもやっていますよね?

23歳くらいの時に、自分のイラストをTシャツなどにして売るブランドとしてガラを立ち上げたんですけど、一度やめちゃったんです。 ガラは、サルバドール・ダリの奥さんの名前から取ったんですけど、30歳くらいになって、大人の女性を意識するようになった時、もう一回「ガラ」ことばが気になって・・・。 ガラって、若手アーティストと浮名を流したけど、一番傍にいる人にはお母さんとかマネジャーみたいにしか思われていなくて、現代の働く女性だったんじゃないかなと。

三軒茶屋×コヤナギユウ
三軒茶屋×コヤナギユウ
1年前にオープンした薄皮たい焼きの店「あづきちゃん」。小豆と豆乳クリーム+気まぐれ(この日は黒ゴマ)があります。

──ダリが売れたのは、ガラという優秀なマネージャーがいてこそと言われてますよね。

それで、自分の思う理想の大人の女性ってなんなんだろう?って考えて、ヴァンサンカンとかVOGUEとか大人の理想像っていうのは昔からあって、 20歳くらいのときは自分もそうなると思ってたけど、実際30歳過ぎてみたら全く変わらないし、そっちにいきたいとも思わない。 自分なりに、日本の21世紀に暮らす30代近辺の女子が着れる服を、ビジュアルで表現したのがファッションブランドとしてのコンプレックス・ガラなんです。

コンプレックス・ガラ
complex gala.のタンクトップ4,200円 (税込)

でも、服をいろいろつくった結果、見た目じゃねえなってところに行き着いて、ビジュアルじゃない部分で探り出したのが、フリーペーパーなんですよ。

三軒茶屋×コヤナギユウ
三軒茶屋×コヤナギユウ
「たい焼きは頭から食べる派」らしい。個性的な柄のタイツは、駅前でタイツ売りのお兄さんから買ったらしい。

──今は本の出版とお店の経営がメインですか?

今年4月にオオヤギみきと一緒に出した、自分でTシャツブランドをつくって儲けるハウトゥ本「HEADGOONIE T-SHIRTS BOOK」が好評で、 9月に、自分でTシャツを作るためのシルクスクリーン製版ショップ「HEADGOONIE INDUSTRIES」を下北沢にオープンしたんです。 でも、実はこれ、壮大な前フリで・・・今度は「自分でお店をつくる本」を出版しようと思ってるんですよ(笑)

HEADGOONIE T-SHIRTS BOOK
「HEADGOONIE SCHOOL T‐SHIRTS BOOK―Tシャツブランドをつくる入門編」1,260円(税込)

──なんと(笑)じゃあ、お店を出す本を作るために、実際にお店を出したという・・・

実はそういう流れなんです。年に4冊出すというのは決まっていたので、次何出そうかって考えていたときに、オオヤギくんが 「店つくる本ってどうですか?」って。「でも、店ないよね。」って。だからあれはフリなんです(笑)
でもさすがに、融資関係がほんっと大変で、今、四苦八苦してるんですよ。

三軒茶屋×コヤナギユウ
「いつも順風満帆にみられるけど、苦しいのが顔に出ないだけなんですよ。」という。

──最後に、8年間住んでるそうですが、三軒茶屋の好きなところを教えてください。

一度住んじゃうとなかなか離れられないんですよね。知り合いが多く住んでるので、さっきみたいにバッタリ友達に会ったり・・・
背筋が伸びてる普段着の街って感じです。 古い街なのでお年寄りも多く下町の雰囲気もあるけれど、単身者も多いので外食には困らない。 あ、あと朝4時までやっているTSUTAYAがないと生きていません(笑)

──ありがとうございました。


撮影協力

a-bridge(エーブリッジ)
住所:東京都世田谷区三軒茶屋2-14-12 三元ビル RF
TEL :03-3418-5013
営業時間:[月~土]12:00~翌2:00 [日・祝]12:00~24:00

FARMER'S(ファーマーズ)
住所:東京都世田谷区三軒茶屋2-14-12
営業時間:10:00~翌1:30

Holiday A・PART・MENT(ホリデーアパートメント)三軒茶屋本店
住所:東京都世田谷区三軒茶屋1-9-13
TEL :03-5433-7265
営業時間:11:00~22:00

薄皮たい焼き あづきちゃん
住所:東京都世田谷区三軒茶屋1-9-13
TEL :03-5779-7556
営業時間:11:00~22:00

三軒茶屋バッティングセンター
住所:東京都世田谷区三軒茶屋2-14-6
TEL :03-3421-3322
営業時間:11:00~19:00(冬季18:00)

三軒茶屋×コヤナギユウ

コヤナギユウ

77年新潟生まれ。路上でイラストポストカードを販売、 口コミで話題になり21歳で画集「and you.」(サンクチュアリ出版)を出版。 渡米以後フロムエー(リクルート社)、MUTTSU(マガジンハウス)にて連載、 バンダイより「and you」ブランドとしてキャラクターグッツを展開。 23才よりWEBデザイナに転身、商業イラストレータとして様々な画風をかき分ける。 CDジャケットからノベルティグッツまで、さまざまグラフィックデザインを経て、2006年独立。 2007年春より法人化し、イラストから媒体を問わないデザイン、ディレクションまで手がける。
i live you! (アイ ライブ ユウ)

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三軒茶屋駅(世田谷区)

田園都市線
世田谷線

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